上毛新聞オピニオン21に寄稿

誇るべき「故郷」の風情




「長男が感じた日本」


私には子供が4人います。上から女、男、女、男という順番で生まれきました。4人ともバリ島で生まれ育っています。そんな子供達ですが、長女は、幼少の頃、何度か日本に来たことがあり、今は神奈川県にある大学に通っています。次女と末っ子の二人も、昨年、初めて日本に来て、短期間でしたが群馬県みどり市の学校に通わせて頂きました。が、高校生になる長男は、16歳になった年に1週間だけ日本に一時帰国しただけです。だからというわけではありませんが、子供達の中では1番日本人っぽくない性格です。今回、そんな長男が感じた日本の印象についてお話したいと思います。

自然に囲まれた常夏の島バリで生まれ育った長男が、初めて日本に来たのが2016年の冬です。成田空港から長女が横浜に借りているアパートに向かったのですが、電車の中、駅構内や建物の中には暖房が効いているので、厳しい日本の寒さを感じることもなく、キレイな建物が並ぶ近代的な風景も、長男にとっては、然程の驚きはなかったようです。シンガポールやマレーシアには何度か行ったことがあり、似たような感覚があったのでしょう。

ただ、面白いことに、デパートやショッピングモールに行った時、店員さんが全員日本人だったことに違和感があったようです。日本なのですから当然ですし、逆に店員さんが日本人じゃない方が異様な感覚に陥りそうですが、海外で生まれ育った子には不思議な感覚だったのでしょう。また、「店員さんはみんなアニメ声だね」ということも言っていました。アニメで見た世界がリアルにあったことが多少の驚きになったようです。

そんな長男ですが、群馬県みどり市に来た時は心底感動したようでした。まず、横浜や東京では感じなかった寒さに驚きます。風が吹く度に「うぉー」という叫び声を上げ縮こまっていました。さらに、山頂に雪が積もっている赤城山と豊かに広がる田園風景、そして所々に見られる日本家屋に松が印象的な庭。そんな寒さと風情のあるみどり市の風景を見た長男が、「これが日本だよね」と言ったのです。長男が思い描いていた日本がみどり市にあったのです。

海外から日本にくる旅行者の多くが思っている通り、キレイに整備された近代的な都市、そして、その中にある歴史的建造物、富士山、桜などが日本の象徴だと思います。しかし、故郷という感覚もまた日本が世界に誇るべき象徴ではないでしょうか。人の温かみが溢れる昔ながらの風景と季節感、そして、そこに垣間見える伝統、文化、歴史。そんな何時までも変わらぬ風情に故郷を感じるのだと思います。


(視点~オピニオン21~:2018年6月3日に掲載)



上毛新聞は群馬県で最も購読数が多いというわれる地元の新聞です。その新聞の中に、群馬県で活躍する一般人の方々で構成される委員が毎年選出され、それぞれが執筆したコラムが掲載される「視点 オピニオン21」という欄があるのですが、わたくし岡柳慶が第26期新委員のひとりに選ばれ、2017年~2018年にかけて寄稿することになりました(全7回)。今回は、バリ島で生まれ育った長男が、16歳になって初めて日本に来た時にもらした感想について書きました。


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