上毛新聞オピニオン21に寄稿

人生のベテランに学ぶ




覚悟を決め、今を生きる


私はお年寄り世代を人生のベテランとして無条件に尊敬します。人生のベテランは英知にあふれ、お話を聞いているだけで勉強になります。長く生きている分だけ経験された苦楽全てが糧となっているベテランのお話は、同世代、あるいは次世代との会話にはないことばかり。感動することさえあります。でも、私がベテラン達とお話するのが好きな理由は、このような単純なことだけでなく、それなりの裏付けがあるからだと思っています。その裏付けとは、人生のベテランは間違いなく若い世代より「死」を意識しているということ。死を意識している人は時間の大切さを知っているからなのか、まどろっこしい話はせず全てが本音。そして、怖いものなしのビックリ発言。覚悟を決めたベテランだからこそ飛び出す特有の本音トークが心に響くのです。

私は幼稚園の時に人はいつか死ぬと初めて知り大きな衝撃を受けました。自分の親もいつか死ぬんだと知った時は、悲しくて悲しくて何時間も大きな声をあげて泣いたことを覚えています。しかし、いつからか、限りある命だからこそ喜びがあるのだと前向きに捉え、奇跡的に生きている今を大事にしたいと思うようになりました。ベテランの本音トークを聞いていると、死を意識することで、ここまで潔くなれるのだと、改めて教えられるのです。そして、私も、生きている今この時間を大切にし、最大限有効に活かしたいと頑張れるのです。人生のベテランは、このようにやる気と勇気を与えてくれるのです。私も何時死んでもいいという覚悟を持ち、与えられた時間を無駄にすることなく今を生きたいと常日頃から思ってはいますが、実際、それを実践することは容易ではありません。逆に、今は死ねないという思いが強く足掻くことのほうが多い。それはそれで、今だからこそ出来ることだとは思います。だからこそ、私には到底真似できない正真正銘の覚悟を持ったベテランのお話は、ある意味、未知の領域であり、私の心に大きな刺激をもたらせてくれる。時に指針ともなる。人生のベテランのお話を聞くのが好きなのは、そういう理由からだと思います。

私が歩んできたこれまでの人生において、それぞれの節目となる、進学、海外移住、就職、結婚に海外での出産、そして企業した時にも、それなりに覚悟を決めたと思います。大した覚悟ではないかもしれませんが、それでも覚悟を決めて突き進んだからこそ今がある。これからの人生、まだまだ覚悟を決めなければならない時がくると思いますが、人生のベテランのお話を聞くと頑張れるように思います。

(視点~オピニオン21~:2018年7月28日に掲載)



上毛新聞は群馬県で最も購読数が多いというわれる地元の新聞です。その新聞の中に、群馬県で活躍する一般人の方々で構成される委員が毎年選出され、それぞれが執筆したコラムが掲載される「視点 オピニオン21」という欄があるのですが、わたくし岡柳慶が第26期新委員のひとりに選ばれ、2017年~2018年にかけて寄稿することになりました(全7回)。

この間、電車のなかで、グズってる赤ちゃんを近くのご婦人があやし始め、すっかり機嫌がよくなり、そのお母さんが感謝していました。聞けばそのご婦人は81才。恥ずかしながらスーツケースを足で挟んで座っていた私はそのご婦人がそこまでベテランだと全く気づかず席を譲っていませんでした。非礼を詫びると「自分は席を譲られたことがない」「立っている方がトレーニングになっていい」と言うのです。乗り換えの駅が同じだったので途中まで一緒に行ったのですが、エスカレーターに乗るそぶりも見せず群衆と共に階段を下ります。最後に、「私も死ぬ時がくるまで精一杯いきるから貴方も頑張るのよ」とお言葉を頂きました。そんな人生のベテランとお会いしたこともあり、今回のテーマにしました。


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